ロバートグラスパーのおすすめ曲|現代の偉大なるジャズメン

Robert Glasper(ロバート・グラスパー)とは?

ジャズのクロスオーヴァーを体現する異端児

ロバートグラスパーは、アメリカ出身のジャズピアニストです。母親がピアニストで、祖母が歌手という音楽一家に生まれて彼自身もピアノを学び、ヒューストンの音楽学校に通っていた時期からその才能に一目置かれていました。

彼の楽曲は一般的に”ジャズ”と分類されるジャンルですが、その型に当てはまらないスタイルは、主に若い人たちが一般的にジャズに対して持っている「堅い」、「おじさんが聴いてそう」といった、マイナスイメージをいい意味で打ち壊してくれると思います。

“ジャズの人間って狭い世界に固まっているくせに、自分たちの存在が気付かれないことで頭にきているみたいだけど、そんなのおかしいだろ?”

インタビューで答えたこのセリフが、彼のジャズミュージシャンとしてのアティチュードを象徴していると思います。自身のフェイバリットについて、なんの惜しげも無くRadiohead(レディオヘッド)やNirvana(ニルヴァーナ)と回答したり、影響を受けたアルバムにはヒップホップのATCQやJDillaを挙げるなど、ジャズという枠組みに対してリスペクトを評しつつ、その閉鎖的なスタイルに一石を投じ、自身のセンスを頼りに、様々なジャンルを横断したまだ見ぬジャズを構築しようとしています。

 

聴くべき曲

“Mayden Voyage/Everything In Its Right Place”

こちらは2007年(録音は2006年)にジャズの名門レーベルBlue Note(ブルーノート)からリリースされたロバートグラスパーによるトリオ形式のアルバム”In My Element”(インマイエレメント)からの楽曲です。

彼が敬愛する偉大なジャズメン、Herbie Hancock(ハービー・ハンコック) の”Maiden Voyage”と、90年代から活動をはじめ、ロック史に置ける最重要バンドのひとつとされているRadiohead(レディオヘッド)の”Everything In Its Right Place“を見事に融合させた名曲です。

この曲は、すでに彼のデビューアルバム”Mood“(ムード)にてプロトタイプを確認することができます。Radioheadがやってきたロックという枠に囚われない音楽をジャズに織りまぜるという彼のスタイルは、若かりしデビューアルバムの時からすでに垣間見ることができます。

 

 “Afro Blue”

彼は、ドラマーにChris Dave(クリス・デイブ)、ベースにDerrick Hodge(デリック・ホッジ)、サックスにCasey Benjamin(ケイシー・ベンジャミン)を据えたバンド形式での新しい名義、Robert Glasper Experiments(ロバートグラスパーエクスペリメント)をスタートさせました。

エクスペリメントという名の通りより実験的な方向へ志向していき、この名義でリリースされた1枚目のアルバム”Black Radio”(ブラックレディオ)は、その錚々たる客演の顔ぶれや音楽性からも、もはや単なる良質なジャズアルバムというより、より広範囲なブラックミュージックの名盤と呼ぶにふさわしいでしょう。参加しいるボーカリストもジャズのみならずR&Bやソウルなど、様々なジャンルに及んでいます。

同アルバム収録のこの曲”Afro Blue”(アフロブルー)は、ジャズに覚えのある人なら知らない人はいないスタンダードナンバーであり、ロバートグラスパーがネオ・ソウルのボーカリストであるErykah Badu(エリカ・バドゥ)を迎えてカバーすることで、この幾度となくカバーされ続けたスタンダードを再び彼らの価値観を元にして再解釈を試みました。

このアルバム”Black Radio”は、ヒップホップ、R&B、ソウルといったブラックミュージック全体に焦点を当て、それらをロバートグラスパーを始めとする一流のジャズメンたちがひとつの作品にまとめ上げるというとてつもなくパワフルな作品なのです。

また”Black Radio”というタイトルは、飛行機などが墜落した際に証拠品として通信記録を記録するための、「ブラックボックス」という機械を由来としています。飛行機が墜落しても絶対に壊れずに残り続ける…自分たちのこのアルバムも、これから音楽業界にどんなことがあってもサバイブし続ける、そんな素敵な意味が込められています。

 

“Let It Ride” Ft.Norah Jones

こちらは、エクスペリメント名義でリリースされた3枚目のアルバムで、”Black Radio”の続編的な位置にあたる”Black Radio 2″からの曲です。

続編という大きな期待の中、エクスペリメントという名前負けしているのではないか?というリスナーの不満も多少ありました。確かに前作と比較しても、その延長線上のような感じで「実験性(Experiment)」な雰囲気はあまり感じられないのが惜しいところ。しかし、客演が前作以上にバラエティ豊富なところが魅力で、前作同様にブラックミュージック関連のボーカリストを招聘しつつも、Fall Out Boy(フォールアウトボーイ)のようなロックバンドのボーカリストもフィーチャリングしています(”I Stand Alone“)。

そして何と言っても、Norah Jones(ノラ・ジョーンズ)とコラボレーションしたこの曲はいい意味で驚かされました。

このアルバムではドラマーのChris Dave(クリス・デイブ)が抜けて新しく、Mark Colenburg(マーク・コレンバーグ)が加入しました。メンバーの中では比較的若く、前任ドラマーが凄かっただけに、ここで期待に応えられる演奏ができるのか不安視されている部分が多分にありました。しかしこの楽曲における”人力ドラムンベース”とも形容すべき正確無比で変態的ドラミングは、間違いなくこのアルバムのハイライトと言っていい出来栄えです。

 

“Worries” Ft.Dwele

こちらも同じく”Black Radio2″から、Dwele(ドゥウェレ)というボーカリストを客演に迎えた曲です。彼はロバートグラスぱーも度々影響を受けたと言及しているJ Dilla(Jディラ)にそのボーカルを高く評価され、生前の彼の作品に度々招聘されています。個人的に好きな曲なので紹介しました笑。

ちなみにこの記事ですでに何度か挙げたJ Dillaという人物ですが、彼はアメリカのヒップホップミュージシャン、ビートメイカーであります。いわゆるAKAIのMPCを使ってビートを作る典型的なヒップホップ畑の人物で、彼の繰り出す魔法のようなビートは数々のヘッズを魅了し、現在でも影響を公言している数多のフォロワーがいます。

 

終わりに

“Smells Like Teen Spirit”

最後にこの曲を紹介しないわけにはいきません。自分は全くジャズを聴いたことのない人間でありましたが、ある日ふとYouTubeのレコメンドにこの動画が出てきたので何気無しに聴いてみたら、バッチリ衝撃を受けました笑。「あのゴリゴリのロックアンセムに、ボコーダーが…それになんてドラミングだ…」と当時は思いました。

彼はエクスペリメント(実験)として、言わずと知れた90年代USの代表的なロックバンドNirvanaの代表曲をカバーしたのです。ロックのアイコンとして語られているKurt Cobain(カートコバーン)と、今のジャズシーンを飛び越え現在進行形で活躍しているロバートグラスパー、彼ら二人は時代もスタイルもジャンルも全く異なりますが、同じく一流のミュージシャンとして、また確かなスタイルを貫く存在として、どこかで共鳴したのかもしれません。

これこそ、常に様々なジャンルをクロスオーヴァーして、新たな境地を探し続ける巨大なジャズメン、ロバートグラスパーの精神をうまく代弁した曲ではないでしょうか?

 

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