アルバム徹底解説vol.1|The Beatles “White Album”

ホワイトアルバムというアルバム

ビートルズとしてリリースした10枚目のオリジナルアルバム。前作”Sgt, Peppers Lonely Hearts Club Band”が一種の語り草として、現在でも多くのロックファンの心を掴んでいることからも、今作はその陰に隠れてしまっている感が否めません。また、フルレングスのアルバムが大体14から15曲程度の曲数なのに対して、今作はなんと2枚組の合計30曲という大作ぶりです。こういった事情が、このアルバムへの取っ付きにくさに拍車をかけているようです。

しかし、筆者的に今作は、The Beatlesというバンドの深遠さを証明するにはこの上ないアルバムだと思っています。というのも今作は、彼らの今までのアルバムにはない”緊張感”というイメージが浮かび上がってくるからです。この”緊張感”というワードを軸にして、少しこのアルバムの素晴らしさを紐解いてみましょう。

いきなりちゃぶ台を返すようなことを言いますが、”緊張感”という言葉を聞いたとき「ん?」と、疑問に思った方は多いのではないでしょうか。それもそのはず、確かに今作には”Ob La Di Ob La Da”に代表される、愉快なナンバーが散見されます、それなのにも関わらず”緊張感”がなぜ今作を象徴するワードになり得るのか、と。

結論はギターのGeorge Harrisonがインタビューで答えています。「腐敗はすでに始まっていた。」と。

つまり、今作はメンバー間での緊張感が非常に高い状態でレコーディングされ、結果として稀に見る傑作が生まれたということです。

のちに彼らが”Let It Be”と”Abbey Road”の二枚のアルバムを、メンバー間でのすれ違いやき裂があるなかでなんとかリリースに漕ぎ着け、1970年、The Beatlesとしてのキャリアに終止符を打ったことはよく知られています。しかし、”Let It Be”などは当時プロデューサーであったGeorge Martinにも、あまり出来栄えが良くないとの判断を下され、少しの間ではあるがお蔵入りが決定した事実があるのです。”緊張感”というキーワードはThe Beatlesのキャリアにおいて主に”Let It Be”のレコーディング時期によく使われていました。もちろんそれは間違いではありません、事実”Let It Be”のセッションではメンバー間の緊張感は極限にまで高まり、それぞれ4人とも「もう終わった」と確信していたそうです。

ここで言いたいことは、巷に溢れかえる自称ビートルズ論において、なんと”緊張感”の最中に作り上げられた、あの”Let It Be”のクオリティを神格化しすぎる向きが強いことか、ということです。確かに”緊張感”は両者ともあった、”ホワイトアルバム”においても”Let It Be”においても、彼らの創造性に”緊張感”が大きな影響を与えたことはまぎれも無い事実です。しかし、その”緊張感”というパワーが作品の結果として圧倒的にプラスの方向に働いたのは、明らかに”ホワイトアルバム”でしょう。事実として”Let It Be”は一度リリースしない、という失敗の烙印を押されています。

“ホワイトアルバム”が最高傑作として語られることは決して無いにしても、なぜ未だに彼らの作品において、このアルバムが一種の独特なポジションを築いているかと言われれば、間違いなく”緊張感”があったから、と答えるでしょう。

ちなみに、愉快な”Ob La Di Ob La Da”のイントロのピアノは、John Lennonがレコーディング中にフラストレーションを爆発させて思いっきり叩くように弾いたものをそのまま使用しているそうです。

残念なことかもしれませんが、時に緊張感が創作に良い影響を与えることは間違いなくあるのです。

 

アルバム収録のおすすめ曲

Dear Prudence

曲のクライマックスに一気にサイケになる瞬間がたまらなくかっこいいです。インドに滞在していた際、いっつも瞑想室にこもって出てこないプルーデンスという女性を呼びかけるために作った曲です。

 

While My Guitar Gently Weeps

The Beatles – While My Guitar Gently Weeps

こちらはGeorge Harrisonの弾き方りとGeorge Martinによるストリングスのみのシンプルなバージョンです。シルクドゥソレイユとのコラボレーションでリリースされた”Love”に収録されています。オリジナルバージョンはこちらから。クレジットされていませんが、ギターソロを弾いたのはGeorge Harrisonの大親友でもある、有名ギタリストのEric Claptonです。レコーディングの緊張感のある状況を少しでも和らげたいとの思いで、George Harrisonが外部ミュージシャンを呼んだそうです。

 

Blackbird

Paul McCartheyによるシンプルな弾き方り、規則的なメトロノームや鳥のさえずりがいい味出してますね。黒人女性の公民権運動を励ますために作ったと語っています。

 

Helter Skelter

ビートルズ史上、最もヘヴィーな楽曲です。レコーディングにおなじみのGeorge Martinは関わっておらず、彼が経営するレコーディング会社であるAirで新たに雇われた新人エンジニアを起用しています。

 

Yer Blues

 

 

Revolution1

 

 

終わりに

このアルバムの正式名称は、”The Beatles”というセルフタイトルですが、程なくして、この印象的なアートワークにちなんで”ホワイトアルバム”と呼ばれるようになりました。この記事でも便宜上”ホワイトアルバム”として表現させていただいています。

ちなみに、アルバムのアートワークを担当したのはリチャードハミルトンというロンドンのアーティストで、60年代に興隆を誇っていたポップアートの巨匠であるアンディウォーホルなどに影響を与えたことで知られています。真っ白なジャケットにバンド名の”THE BEATLES”とシリアル番号だけがエンボス加工で刻印されたアートワークは、ロック史上を振り返ってみても稀に見る傑作として評されています。

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